失敗の本質。

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おはようございます。
大津市議会議員、藤井哲也です。

国政においては大学認可の問題で、田中真紀子文部科学大臣が前言を撤回して、3つの大学の認可をおろすということになりました。そもそも、しっかりとした目的を持って「不認可とする」という決断を下したのかが問われます。

これまでの「大学を認可」 ⇒ 田中真紀子大臣による「不認可」 ⇒ 一転して田中大臣による「認可」

という流れを見て、どこかで聞いた経緯だと感じました。
そして思い出しました。
大東亜戦争(第二次世界大戦太平洋戦線)における、海軍のターニングポイントとなった、ミッドウェイ海戦です。

ご存知の通り、ミッドウェイ海戦において、日本は主力航空母艦四隻とも失うという大敗を喫して、この海戦をターニングポイントに、太平洋戦線において大きくイニシアティブを米国に奪われることになりました。

よく聞く敗因としては、敵主力艦隊(主に航空母艦)を撃滅するために当初は「雷装(魚雷装備)」だったものを、ミッドウェイ島空襲に作戦を切り替えようと「爆装(爆弾装備)」に切り替えようとしている途中に、敵艦隊発見の報が入り、急遽、「雷装」に再転装している混乱の最中に、敵雷撃機が襲来し、日本海軍にとって主力4艦を失ったということです。

指揮官の判断が二転三転して、挙句の果てに大損害を被るという図式が想起されるところです。



そして、似たような出来事がこの大津市でも起きていたことも思いだします。

たとえば、大津市のごみ処理を行う、「クリーンセンター」をめぐる問題です。
中日新聞さんが数日前に報道されていたので、一部引用させて頂きます。

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大津市は、三カ所あるごみ処理施設の建て替え計画を見直す方針を固めた。十二月市議会に上程する補正予算案に環境コンサル業者に業務委託する調査費を計上し、効率的な処理や財政運用を考慮し、本年度内に施設数や規模を再検討する。市議会や一部の地元関係者にも方針を伝えた。
                  <中略>
越直美市長は今年一月の就任前、市長選の公開討論会で「建て替えが本当に必要か見直す必要がある」と発言。これが施設数の削減と受け止められ、市議会の最大会派・湖誠会などが反発。越市長は二月市議会で「三施設の処理体制を基本理念としていることをあらためて認識しました」と答弁し、考えを修正したが、再び、計画を見直す形になる。

11月7日、中日新聞記事より一部引用
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つまり、
市長就任前は「クリーンセンターは2か所にすべく見直す!」 ⇒ 今年2月議会で「いや3か所を維持する!」 ⇒ 現在「やっぱりもう1回見直す!」という流れです。

たった1年弱の間に、重要政策について二転三転しています。まるで、鳩山元首相が辺野古以外へ米軍基地を移転するしないといった妄言を吐いていたのを思い出します。
また、紆余曲折して、結局 答えが同じならば、ごみ処理行政をめぐって大きく市政が停滞するのではないかと感じます。実害として大津市民に大きく跳ね返ってこないかも心配です。どうしても今後、クリーンセンターをめぐる議論のし直しや交渉などの必要性から、時間の制約が生じてきて、無理な進め方をせざるを得ないと感じるからです。
また、3か所体制を前提として、市長提案及び議会議決も経て、南部クリーンセンター周辺の環境影響調査も行っているところです。最初から「2か所体制で行きます」と言っていれば、こうした環境調査に使った無駄な税金も使わずに済んだのではないかと思います。
このあたり、市長はどう考えているのでしょうか。自分の判断が誤ったために、予算執行をしてしまい、市民の税金を無駄遣いしてしまうことになります。
しっかりと検討プロセスも含めて説明責任を果たされることを願います。

そのほか、大津市役所隣接地の購入問題に関しても、
9月議会では「付属機関を設置してそちらの委員会で隣接地購入の必要性について検討してもらう」という趣旨の発言 ⇒ 10月22日の定例記者会見「隣接地は購入しない」 ⇒ 10月31日「検討委員会の発足前で、議論に影響を及ぼしかねなかった」と議会へ謝罪 とこちらも二転三転しています。

市長は教育委員会のことを、二転三転しており信用できないと言っていましたが、市長が市民から信用されない、つまり市政が市民に信用されない事態になってしまわないか心配です。


「失敗の本質」という名著があります。


(「失敗の本質」戸部良一氏、野中郁次郎氏他著)


その第1章第2部には、先に挙げた「ミッドウェー作戦」について書かれています。
一部引用します。

ミッドウェー作戦の主眼とするところは、ハワイ奇襲で撃ちもらした米太平洋艦隊の空母群を捕捉撃滅することであった。しかし米空母群を捕捉撃滅するためには、日本艦隊が決戦を強要しようとする海域に出撃してこなければならない。したがってミッドウェー作戦は米空母群の出撃を誘出するための条件をつくり出さなければならなかった。つまり、この作戦の真のねらいは、ミッドウェーの占領そのものではなく、同島の攻略によって米空母群を誘い出し、これに対し主導的に航空決戦を強要し、一挙に捕捉撃滅しようとすることにあった。ところが、この米空母の誘出撃滅作戦の目的と構想を、山本は第一機動部隊の南雲に十分に理解・認識させる努力をしなかったのみならず、軍令部に対しても、連合艦隊の幕僚陣に対してすらも、十分な理解・認識に至らしめる努力はなされなかった。したがって、ミッドウェー攻略が主目的であるかのような形になってしまった。
(p100-101)



この本には、先の戦争における失敗要因の一つに、「目的のあいまいさと指示の不徹底」であるとしています。

大津市長がどのような思考を経て、クリーンセンターを「2つ」⇒「3つ」⇒「2つを前提に見直し」という風に変遷したのかわかりません。また市役所隣接国有地をめぐる発言においても二転三転しているのかわかりません。

あくまで推察に過ぎませんが、行動や考えがブレる原因は、「目標や目標達成のためのビジョンが非常にあいまいで、それを部下にきちんと伝えることができていないこと」が一つにあるのではないかと思います。

リーダーの目標やビジョンがあいまいなのに、部下に対しては「市長マニフェスト達成のための計画を出せ!」というのは、現場が混乱するばかりです。部下(市職員)からすれば迷惑千万で、結局、計画の作りなおしに忙殺され残業が増加しています。本来、公務員は言われたことはしっかりできる人が多いので、リーダーさえしっかりと方針を示していればそのような無駄な時間は使わずに済むと思うのですが、更にその上で「仕事ダイエット計画」なる残業削減のためのアクションがトップ主導で唱えられ、部下(市職員)としては、もはやどうしようもない状況に陥っているように見えてきます。
ようやく部下が(無駄に時間を費やして)作ってきた計画をベースにして、市長自身のビジョンの再構築や政策決定(目標の設定)をしているからこそ、途中で方針が変わるのではないでしょうか。

別に公務員の味方をしているわけでは全くないのですが、一つの組織として、リーダーのマネジメントのあり方としておかしいのではないかと、垣間見る中で思うところです。


ともあれ市長の双肩には、34万人とこれから産まれてくる市民の未来がかかっています。
目標・ビジョンの不明確さや、判断のブレは、大失敗につながることになりかねません。
未来の大津市民にとって、大きな負の遺産を残さないよう、リーダーとして意思決定して頂きたいと切に願います。

本件は、市長はじめ執行部の意思決定、政策決定過程に大いに問題があることが露呈した事案だと私は感じています。







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