【一般質問解説⑤】 大津市の妊娠・出産・子育てのシームレス支援

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 「ネウボラ」という事業を聞いたことがありますか?
 市長選挙公報で越市長が一番最初に取り上げていた事業です。

 子育て先進国として有名で、合計特殊出生率も1.8を越え、社会保障の持続可能性を高めているフィンランドが発祥の事業です。「アドバイスする」を意味する「ネウボ」と、「場所」を意味する「ラ」を組み合わせた言葉で、その言葉通り、妊娠・出産・子育てをシームレス(切れ目なく)支援する制度です。
 ※以下、フィンランド大使館ホームページより「ネウボラ」に関する説明欄を抜粋
 
ネウボラ(フィンランド大使館HPより)
フィンランド東京大使館ホームページより)


 大津ではもともと「大津方式」と呼ばれる障害児の早期発見と対応を結ぶ行政システムが有名で、これに関連して子育てなどに関する相談体制は充実しています。
 そうした中で、越市長が一丁目一番として「ネウボラ」を掲げて選挙を戦われたので、いったいどういう制度・事業をイメージしていたのかを知りたく思いました。
 以下、質問および答弁(再質問は除く)です。


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質問(藤井):
 選挙において、市長は「大津版ネウボラ」をマニフェストに掲げていた。ネウボラは発祥地のフィンランド語で「アドバイスを受ける」を意味する「ネウボ」と、「場所」を意味する「ラ」という言葉が意味するように、妊娠から就学前まで出産・育児を一貫してサポートする制度であり、日本においてもすでに多くの自治体がご当地版のネウボラを導入している。
 市長がマニフェストに掲げた際にイメージした、「大津版ネウボラ」の事業内容やその効果、また今後の検討・実施のスケジュール感を問う。

答弁(健康保険部長):

 ネウボラは、「助言・アドバイスの場」として、妊娠期から就学前まで、かかりつけの保健師が母子を含めた家族全体に寄り添い継続して支援する、子育て家族にとって身近な地域のサポート拠点であると考えております。
 本市では市民の身近な相談支援の場であるすこやか相談所を拠点として、母子健康手帳の交付とともに保健師が直接妊婦相談を行い、新生児訪問、子育て教室や健康相談等、子育てに関する様々な支援を行っております。
 しかしながら、多くの支援サービスがあるなか、すべての人に適切にサービスを活用いただけない現状もあることから、それぞれにあったサービスを提供できる仕組みが必要であると認識しております。
 また、既存のサービスの活用と、市民のニーズを把握しながら、さらに必要とされる支援を検討するとともに、現状の課題等をしっかりと整理する中で、本市の特徴や良いところは市民にわかりやすく打ち出していく必要があります。
 そのため、できる取組みのひとつとして、来年度から母子健康手帳を交付する際、保健師がお一人おひとりに合った支援計画を、妊産婦とともに作成し、より細やかな子育て支援を展開してまいります。
 今後も、先進事例を参考に、すこやか相談所のみならず、地域の様々な関係機関および関係部局と連携し、安心して子育てができる環境づくりと、子育て家族にとってわかりやすい情報の提供に努め、大津の特徴を生かした切れ目のないサポート「大津版ネウボラ」を目指して参ります。以上でございます。


 ・・・。
 市長がどんな思いで選挙公報に掲載したのかを聞いているのですが。なぜ健康保険部長が答弁を??健康保険部長が選挙公報をまとめたのでしょうか?
 市長がどんな思いで公報に記載したのかを聞いているのだから、行政職員ではなく、候補者であった市長自身が答えるべきでしょう!? 答弁を聞きながら笑いを抑えるのに苦労しました。


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 もらった答弁で納得できるはずもありません。
 これまでの子育てに関する支援策を寄せ集めて、ワンストップで包括相談できる仕組みづくりを以って「大津版ネウボラ」というのなら、迫力不足で、子育て支援に対する積極姿勢を感じられません。
 私自身、3歳の子どもがいて、子育てをしながら実感として思うことが多くあります。
 また、友人知人にも同世代の子育て中のパパ・ママがたくさんいます。そうした方から相談を頂くことも多くあり、既存の大津市の行政サービスでは難しい問題があることも承知しています。どうせならば、日本に誇れる「大津モデル」として「大津版ネウボラ」を作り上げ、子育て先進地として日本全国に名を馳せ、「子育てなら大津市」として市内外から大注目されるような体制構築をしていってほしいと思います。

 来年度からは、母子健康手帳を交付する際、保健師がお一人おひとりに合った支援計画を、妊産婦とともに作成し、より細やかな子育て支援を展開していくということで期待したいと思いますが、本会議一般質問で私がもう一つ提案したのが、「子どもを保育所に入れるために保護者が行う活動(保活)」に関する相談機能を、ネウボラに持たせ、一元的な相談体制を作ることです。

 私の友だちに妊娠して間もない時期から、0歳児で預かってくれる近隣保育所探しを始めた方がいました。また上の子どもが京都の私立小学校に通うことが急に決まったため、家計を支えるために再就職しなければならず、急きょ下の子ども2人を保育所に入れる必要が生じた方がいました。
 現状では、保育幼稚園課がそうした相談を受けていますが、あくまで保育園の入所に関する情報提供や相談だけであり、それ以外の広範囲な子育て支援や就労支援に関しては、別個に相談をしなければなりません。
 子育て中のママ・パパは大変忙しく、電話ひとつするのもなかなか大変ですし、ましてや窓口に行って相談するなどは時間的にも労力的にも厳しいものがあります。

 「大津版ネウボラ」が仮に、「保活」相談や、職場復帰、再就職活動の支援を包括的に扱えるようになるらならば、当に「切れ目のない妊娠・出産・子育て支援」になるはずです。逆に言えば、そうした相談機能を備えていないのであれば、「ブツ切りの妊娠・出産・子育て支援」と言えなくもありません。市民目線に立って、新しい事業の検討をぜひ進めていって頂きたいと大津市行政には期待しているところです。

 ちなみに以前も一度、本会議一般質問で取り上げたように、大津市には本庁舎新館1Fにハローワーク機能を持っており、保育ママも利用対象者に含めてはどうかと提案しました
 その際の答弁では、
 ● 生活困窮者の就労支援に支障がなければ、対象者拡大を妨げるものではない。
 ● 今後、滋賀労働局などと協議をして対象者を拡大できるか検討していきたい。
 ● 市役所内に託児ルームを設置するかは、財源やスペースなどの検討課題があるので調査していきたい。
 ということでした。

 ぜひとも、「妊娠・出産・子育ての切れ目のないサービス」を前に進めてもらいたいと思っています。


大津市議会議員 藤井哲也拝





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