【一般質問解説⑥】 大津市の結婚対策(大津市の出生数アップについて⑤)

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 大津市議会2月議会も半ばを越え、いよいよ採決が近づいてきています。
 2016年度の当初予算ということで、年間を通じて特に重要性が高いと認識しています。
 現在のところ、いくつか問題があることが分かっており、修正案を提出する方向で会派で協議を進めています。仮に修正案が通らずとも、予算及び事業における問題点の顕在化という観点から意義あることと捉えており、臆することなく主張をしていきたいと思います。

 一般質問解説の最後の項目は、「大津市の結婚対策」についてです。
 先月に「大津市の出生数アップについて」というシリーズで4回にわたって記載をしておりましたが、本記事をその⑤として位置付けまとめとしたいと思います。


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 昨年11月に、国の地方創生に係る補助金を使って大津市が少子化対策ポジティブキャンペーンイベントを実施しました。「ライフスタイルミーティング大津」というイベントです。当時のブログ記事にも率直な感想を書いている通り、あまり面白くありませんでした。

ライフスタイルミーティング大津チラシ

 このイベントそもそもの目的が、少子化対策に資するべく活躍中の女性の講演を聞いて、参加者が自分で将来のことを考えるというものでしたが、しょっぱなの講演そのものがオオコケで、聞いていて正直耳を覆いたくなるような自分の活躍自慢話ばかりでした(高橋メアリージュンさんを除く)。
 イベントの参加人数が少ないのは企画や広報の問題で改善の余地はありますが、内容については抜本的に見直さないと単なる税金の無駄遣いに終わってしまいます。

 「少子化対策」と「女性活躍」がごっちゃ混ぜになっていて、目的が曖昧になっているばかりか、目的と内容に齟齬があるため、参加された方のモチベーションが女性活躍につながることはあったとしても、少子化対策に資することはほとんどないように思われます。

 大津市では女性が働きやすい環境を整備するために、保育所増設や市内企業と連携しながら、ワーク/ライフ・バランスの雰囲気作りを進めてきており、こうした施策の恩恵を受けて働きながら妊娠・出産・子育てをすることができている普通の人やロールモデルとなるような人を呼び、話をしてもらうのが本筋でしょう。
 また一度イベントをやって終わりではなく、そこをスタートアップの起点として、「結婚」や「妊娠・出産・子育て」をポジティブに考える機運作りを醸成していかねばなりません。イベント一回成功したから、機運が醸成できたかと言えば、そんなことはなく、そこからどのように醸成していけたのかがポイントです。そのために欠かせないのが、民間企業や市内NPO、市民活動団体に対する連携、育成、支援です。

 いま大津市が立っている場所は、1合目でもなく、登山に向けて家を出る前の準備段階です。
 少子化対策を体系的に組み立てて、三者が協働しながら取り組んでいくための前段階です。
 なかなか動きは鈍いですが、しっかりとやってもらわねばなりません。本会議一般質問ではこうしたことを踏まえて質疑を行いました。


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■質問(藤井)
 昨年、大津市行政が策定した「大津市ひと・まち・しごと創生総合戦略」では、4年後の合計特殊出生率の目標を1.58達成に設定した。なかなか高いハードルだが、達成できない目標ではないと考える。
 実現のためには、大津市行政が地域内の保育士確保や、三世代近居同居の促進、地域の保育力の向上などにこれまで以上に積極的に取り組み、地域内の保育キャパシティを高めていくと共に、安心して子育てできる地域社会づくりのため、市内事業者と連携してワーク/ライフ・バランスの普及にも取り組んでいかねばならない。
また、経済的理由により出産や結婚を躊躇したり中絶する若者を減らすために、大津や近隣地域の連携しながら正規雇用を新たに創出するための大胆な施策が求められる。
 今回提出されている来年度予算においては、子育て支援の環境整備のための事業内容や、予算額ともに、まだまだ不十分ではあるとは感じるものの、本格的な施策展開に向けた取っ掛かりとしてならば一定評価したいと考えている。
 ところで、日本人には「結婚してから出産する」という結婚観念が強く、婚姻率や初婚年齢が「子どもの人数」と密接に関わっていることから、国においても結婚を出産につながる一ステップと捉えて「結婚・妊娠・出産・子育ての切れ目のない支援」を少子化対策の根本に置いており、少子化対策に熱心に取り組む地方自治体も、「結婚対策」に力を入れて取り組みはじめている。
 それに比べ、本市の出生率対策としての「結婚対策」は若干軽視されているように感じられる。どの個別行政計画を見ても、結婚対策について具体的な施策はほとんど見られず、ひと・まち・しごと総合戦略において若干の記載が見られるだけである。
そこでまずは、行政機関が出生率向上のために「結婚対策」を行う必要性(行政の結婚対策が少子化対策として有効か?)や、本市行政の「結婚対策」に関する昨今の取り組み状況を伺う。
 また、国の出生動向基本調査や本市の独自調査などを総合的に分析すると、「結婚して(子育てして)幸せになっている友人・知人が周囲にいるかどうか」が、結婚や出産の動機づけとして大きな要素ではないかと考えられる。
 つまり身近に若くして結婚し幸せに過ごしているロールモデルが昨今、絶対数として減っており、具体的な結婚後のイメージが持てないことが少子化、特に未婚・晩婚化の要因として大きいと考えられる。
 大津市がとるべき未婚・晩婚化対策の重要なポイントは、「結婚・子育てをしている幸せいっぱいの20代から30代前半の若者の姿・イメージ」を、同世代の若者に広げていくと共に、大津市行政として民間企業や各種団体と連携した結婚対策を展開し、地域社会における結婚機運を高めていくことだと考える。
 本年度、少子化対策に熱心な自治体として知られる福井県と、福井県内で唯一人口が増加している鯖江市、そして住民の幸福実感と出生率との関係性を研究する東京都荒川区へ行政視察に行ってきた。
 なかでも福井県は子どもの学力・体力は全国トップクラスを維持し、三世代同居率や起業家輩出率、幸福度指数でも全国屈指でもあるのは良く知られているが、行政による「結婚対策」も全国指折りの先進性に感じられた。

福井県事例紹介①

福井県事例紹介②

 福井県では、婚活セミナー実施はもちろんのこと、幸せな結婚やあたたかい家族の良さを、ホームページやCM等で広げる「いいね!結婚 福井県結婚ポジティブキャンペーン」を実施し結婚機運を高めていたり、企業や団体に「職場の縁結びさん」を設置したり、または「ふくい結婚応援企業」の登録を呼びかけたりして職場のつながりを活かした縁結びを推進したり、またはボランティアで男女の縁結び活動を行っている「地域の縁結びさん」による活動を支援したりと様々な「結婚対策」を行っている。
今後は、若者が気軽に登録できる新たなマッチングシステムを導入した「(仮称)ふくいマリッジサポートセンター」を設置し、若者の出会いのチャンネルを増やす施策展開も進めていくという事である。

福井県事例紹介③

 大津市行政としても、少子化・晩婚化を課題と捉え、平成32年に合計特殊出生率を   1.58に引き上げようとするならば、出産・子育てがしやすい環境の整備を計画的に進めていくとともに、来年度も予算計上されている「少子化対策に向けた機運醸成のための経費」を、福井県などの施策を参考に、結婚機運を高めるためのポジティブキャンペーンとして実施し、次年度以降の具体的な結婚対策の施策展開に向けた検討もあわせて進めていくべきと考えるが、見解を問う。

■答弁(福祉こども部長)
 ご質問にお答えいたします。
 出生率向上のための施策の一つとして、結婚に対する意識を高める情報提供や啓発等の実施、出会いの機会の提供に向けた支援などについて、特定の価値観の押し付けにならによう配慮しながらではありますが、行政による取り組みも必要であると認識しております。
 本市では、これまで地域の活性化に向けた公民館活動としての婚活イベントの開催をはじめ、今年度は新たに結婚・妊娠・出産・育児までの自分自身に合ったライフプランを具体的に考える機会となる「ライフスタイルミーティング」を開催し、市民の皆様の結婚から育児に対する前向きな機運の醸成を図ってまいりました。
 昨年10月に策定した「大津市まち・ひと・しごと創生総合戦略」においても、結婚・妊娠・出産・育児の切れ目ない支援を施策の一つと位置付けており、今後も関係各課が連携して取り組みを進めてまいります。

 また議員お述べのように、福井県は男女の出会いを直接的に支援する事業に先進的に取り組んでおられますが、こうした事業は県としての取り組みであり、滋賀県においても少子化対策ポータルサイトの開設が本年4月に予定されるなど、少子化対策全体に向けた取り組みが進められています。
 本市における来年度の「少子化対策に向けた機運醸成のための経費」につきましては、今年度実施した「ライフスタイルミーティング」の成果を引き継いで行うものであり、結婚から子育てまでの切れ目のない少子化対策への機運醸成を目的に、参加者が結婚を含めた出産・子育てに対して前向きに考えていただける事業を実施してまいります。
 県とも連携して、効果のある施策を進めてまいりたいと考えています。

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 答弁自体はドライなものに感じますが、担当者と話をしていますと、昨年の反省を生かした事業展開を企画してくれそうな期待も持てます。
 団塊ジュニア世代がもう間もなく出産適齢期を終えようとしています。できる限り早期の対策が必要なのは言うまでもありません。
 来年度からは、まずは結婚を、そして妊娠・出産・子育てがしやすい環境づくりを推進し、少しでも出生者が増えることを願ってやみません。本気の対策を私も求めていきたいと思います。

大津市議会議員 藤井哲也拝




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