【11月議会一般質問解説①】大津市の新しい総合計画について

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 遅くなりましたが12月21日に閉会した11月通常会議で取り上げた一般質問について、質問の背景を含めて取り上げます。

 まずは「大津市の新しい総合計画」についてです。
 この質問は次の「大津市の行政評価制度について」と密接に関わってきますので、本記事と一緒に次の記事もご覧いただけましたら幸甚です。


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 大津市に限らず地方自治体は「総合計画」という約10年間の計画を最上位に置き、その総合計画に従って福祉や子育てなど個別の行政計画が組み立てられ、その個別行政計画を推進するための予算措置が毎年度行われていくこととなっています。
 大津市では本年度で現総合計画が終わることもあり、平成29年度から12年間を計画期間とする新しい総合計画を現在、策定中です。(前記事では此の新総合計画の実行計画部分のパブリックコメントについて取り上げました

 「総合計画」そのものは、議会の議決を経て、最終案が確定されることになっており、これまでも策定作業の中で意見を申し上げてきましたが、どうしても気になるのが、その総合計画の「運用」です。どれだけ良いものを作ったとしても、それを動かす仕組みが良くなければまったく意味を成しません。
 この「総合計画」を動かすための主な仕組みが「行政評価制度」であると考えており、「行政評価制度」をうまく機能させるためには、翻って『「総合計画」が分かりやすい体系・ロジックモデルとなっているか』、また『「行政評価制度」そのものがしっかりしたものであるか』、そして『行政評価結果が予算へしっかり反映されているか』ががポイントだと感じます。

 現「総合計画」は正直なところ分かりにくいです。ロジックモデルがしっかりしていないと感じます。




 
 上の2つの図は現「総合計画の体系」です。
 一つ目の図では「政策ー施策ー事務事業」となっていますが、二つ目の図では「政策ー施策ー重点事業ー事務事業」となっています。

 この中で「重点事業」というものがあります。ここが変だよ大津市総合計画。

 大津市行政の説明によれば、「重点事業」は「事務事業」の一つではなく、事務事業を一括りにしたものとのことであり、もしそうならば、大津市の政策体系は「政策ー施策ー重点事業ー事務事業」となるはずなのですが、「重点事業」と「施策」のつながりがよく分かりません。
 あくまで事務事業の立場から見れば、施策にどれだけ貢献できるかという点が大切であり、逆に施策の立場から見れば事務事業がどれくらい効率的にできているかが大切となっており、そこに「重点事業」が入る余地があまりありません。
 これは制度が複雑というよりも、政策体系が崩れているというレベルの話だと思います。

 なぜこの政策体系・政策ロジックモデルが重要なのかと言えば、政策体系の末端「事務事業」が+評価になれば、上位の「施策」に+の影響を与え、「施策」が+評価になることで「政策」の実現にも+の影響を与えるはずなのですが、現在の大津市の場合、「重点事業」に事務事業の成果はどのように反映され、「重点事業」の結果は「施策」にどのように影響を及ぼすのでしょうか?

 自分なりにも一般質問に立つ前に、いろいろな部署の人に聞いてみましたが、「これ!」という答えは得られず、余計に分からなくなってしまいました。

 以下、一般質問でのやりとりです。

         * * *

【質問】藤井哲也
 新しい総合計画を策定するにあたり、基本政策・施策と事務事業の関係性を改めて確認しなければならない。
 新しい総合計画の策定に向けて実施した有識者4名から成る総合計画総括評価会議では、ロジックモデルを踏まえた体系化の必要性について、次のように意見が述べられている。
 「全体的に高い目標を掲げている中で、そこで展開される基本方針の数が少ない(基本方針3)、目標の大きさにそぐわないような印象を受ける政策や施策(基本政策8施策 36 等)も見られる。政策を構成する施策の形成過程において、期待される効果を十分に分析する必要がある。」
基本政策及び施策は「目的」にあたり、事務事業がその目的達成のための「手段」であることは一般的であることから、政策及び施策では市民目線の「アウトカム指標」の設定を、そして事務事業では実績測定をするための「アウトプット指標」の設定が適切だと考える。
 本市の政策・施策及び事務事業における設定する成果指標に関する見解を問う。

【答弁】政策調整部長
 総合計画に掲げる将来都市像を実現するための取り組みである施策の指標については、アウトカム指標で表すことを第一に考え指標の設定を進めます。ただし全ての施策について一様に的確なアウトカム指標が設定できるものではなく、その場合には施策の進捗を代表するアウトプット指標の設定も含めて考えていくものとします。
 一方、事業に対しては、活動量が重視されることから、指標を設定する場合にはアウトプットが基本となることが一般的であると考えています。

【解説】
 アウトプット指標とアウトカム指標については、下図をご覧ください。
 現在の総合計画ではアウトプット指標とアウトカム指標が混在している課題もありましたので、取り上げました。大津市行政からは前向きな回答を得ました。


出典:客観指標の設定マニュアル(京都市,2016)

 この部分をクリアにしたうえで次のように一般質問を続けました。

【質問】藤井哲也 
 現行の総合計画の体系にある「重点事業」は、「主要事業ヒアリング」を通じて予算編成に大きな影響を与えているが、関西圏の中核市総合計画をあらかじめ確認したところ、本市のように「重点事業」を、施策や事務事業と別に定めている自治体はほとんど見つけられなかった。(施策評価結果を受けて事務事業の中から重点事業を選定する方式は見つけられる)
 また、その進捗状況は議会に公表されておらず不透明である。
 あらかじめ実行計画で重点事業を設定するよりも、施策評価を通じて毎年度、重点事業をピックアップする方法が環境変化にフレキシブルに対応できて望ましいと考える私の立場からは、現在の実行計画における「重点事業」の位置付けやその必要性、また進捗状況を非公表としている点について理解を深めたいと考え、説明を求めるものである。

【答弁】政策調整部長
 現「総合計画」における「重点事業」は、施策の「重点化の視点」に基づき、実行計画の期間において、特に重点的に取り組む事業としています。なお、全ての事業を計画に位置付けることは現実的ではなく、困難でもあることから、他都市でもみられるように主な事業を抽出して記すことが相当と考えています。
 また、重点事業の公表は、計画期間満了後の総括において、事業実績や成果、今後の方向性について一覧で公表しています。

【再質問】藤井哲也
 重点事業や主な事業として事務事業と別において、「政策―施策―重点事業―事務事業」と実質的に4層構造としている自治体は数えるほどである。総合計画の体系を考える上で大変ややこしいので、施策評価を通じて事務事業の中からピックアップして事業を重点化する方法に改めてはどうか?
 また実行計画満了ごととなると4年に一度というタイミングになるが、他都市では毎年度の進捗状況を公表している。隠す必要はないと考えるがなぜ4年ごとの公表なのか?

【再答弁】政策調整部長
 事務事業をすべて位置づけている総合計画はないと考えるが、その中でいくつかの事業を抽出して施策ごとに取りまとめして「重点事業」として示している。
 なぜ4年ごとなのかについてですが、「施策」と「事務事業」は毎年公表しているが、一方で「重点事業」は、内部管理の指標として扱っていることから、4年の実行計画の総括時に議会に報告させて頂いている。また決して非公開と言うわけではない。毎年進捗確認はしているが、4年ごとに総括をお示ししている。

【解説】
 大津市は、「事務事業」からいくつかを“抽出”し、“とりまとめ”て「重点事業」としていると述べている。
 ここで改めてになるが、市の見解をまとめると「事務事業」と「重点事業」は異なるものである。そして事務事業のいくつかをまとめたものが「重点事業」ということである。これは分かる。
 しかし政策体系においては、「施策」と「重点事業」はどのようにロジックモデルがつながっているのだろうか?「施策」と「事務事業」との間に「重点事業」が入る必要性はあるのだろうか?この点に疑問がわいてくる。
 恐らくこの問題は、議員や行政に興味関心がある市民の皆様でも分かっているようで分かっていない問題ではないかと感じます。実際、市のそれなりの職員の方に聞いても、うまく説明頂くことはできませんでした。

 一般質問については、本丸の「行政評価制度」に関する質問に費やす時間を確保したかったのでこれ以上詰めることができませんでしたが、大津市の総合計画における「重点事業」もしくは「主な事業」というのは、総合計画の円滑な運営という観点からすると、大変わかりづらいものです。

 他都市では、「施策評価」を行う中で、「事務事業」の中から毎年重点的な事務事業をピックアップする方式をとっているところが散見されます。社会環境変化にも柔軟に対応することができ、こちらが本来あるべき姿のように感じます。
 また次記事で出てきますが、「重点事業」のレベルで、主要事業ヒアリングを二役(市長と副市長)が行っていますが、本来は「施策」レベルで行うべきです。その上で重点化すべき事務事業を所管部局と調整すべきではないでしょうか?

 今回の一般質問は少し専門性が高い質問となっており、もしかしたら一般の市民の方にとっては大変難しいかもしれません。できるだけ分かりやすく解説しているつもりですがご了承ください。


大津市議会議員 藤井哲也拝






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