【一般質問解説②】 子ども人口減少を見据えた保育所整備を考えよ!

ホームブログ>【一般質問解説②】 子ども人口減少を見据えた保育所整備を考えよ!


 大津市では現在ちょうど市民センターのあり方検討が進められており、市教育委員会においては公立幼稚園と公立小中学校の規模適正化の検討が始められています。これらは、大津市の人口減少を見据えた公共施設の統廃合や機能集約化、子どもにとっての教育環境の維持を図ろうとするものです。
 政府においても平成26年4月に「公共施設等総合管理計画の策定にあたっての指針」を示し、全国の都道府県・市区町村に対して、公共施設等を長期的な視点で更新・統廃合・長寿命化などを計画的に行うことにより、財政負担を軽減・平準化し、公共施設等の最適な配置を実現することを求めています。

 人口減少社会に直面し、これまで必要だった公共施設も人口規模に合わせて縮減をしていくという事は、財政面から見て理にかなっていると思います。学校の統廃合についてはそう簡単な問題ではないかもしれませんが、私がかねてから提案している「学園制度(本校・分校制度)」を導入し解決していける問題だと考えています。

 さて、今回の一般質問では、増やし続ける保育所について、いったいどこまで増やす必要があるのか、そして増やすにしてもどのようなあり方で増やすのが良いのかを考えたものです。
 私が居住する大津市北部エリアでは、大津市の中でも少子高齢化の進展が速く、こども人口も今後大きな開発がなされない限り減り続けていくことが想定されています。そうした中にあって、来年も再来年も新設の民間保育施設が作られることが決まっています。
 ただでさえ、保育士さんの確保が難しくなってきている中で、全国展開しているチェーン保育所が新たに設置する保育所との間で人材争奪戦が生じてしまうことになります。老舗保育園は全国チェーンの保育所と違って、保育士確保にかけられる財源の限界点が低く、どうしても争奪戦において劣勢に立たされます。これまで地域で頑張ってこられた保育園の運営を圧迫する事態がすでに起こり始めているのを見て、ふと大津市の保育所の増設方針に疑問を抱きました。
 「いったいどこまで保育所を増やすのだろう?」「中長期的な保育ニーズをどのように予想しているのだろう」と。

 2015年に行われた国勢調査の結果と、大津市の人口ビジョンで記載さ入れている年少人口などを基に、保育利用率が現在の40%から2040年時点で55%に高めると目標設定した場合、下図のような推計ができます。



 2030年頃には700人分の定員過剰が生じており、2040年頃には1千人を超える過剰が生じています。2040年と言えばかなり先のように思えるかもしれませんが、今から23年前は1995年です。ウィンドウズ95が発売され、オリックスでイチローが活躍し始めた頃です。ある意味、あっという間に2040年は来るのかもしれません。
 また、一般的に鉄骨建物の34年とされており、2017年現在、新規開設した建物については2050年頃まで使うものと考えられます。保育定員を減らそうにも、民間園では統廃合は難しいであろうし(社会福祉法人などが行っている分園制度なら可能かもしれません)、一定の収益を見込めなくなれば、全国チェーン展開している保育施設などは地域から撤退するリスクがあるかもしれません。
 こうした展望を見越した上で、本来は保育施設の整備を進めるべきではないかと思います。

 一般質問を行うにあたって、あらかじめ所管課に確認したところ、「こども・子育て支援事業計画」で定める5年間の見込みは立てているが、20年後、30年後の推計は立てていないというものでした。学校や幼稚園、また市民センターについては20年後、30年後の公共施設のあり方を検討しているのにも関わらず、なぜ保育施設ではこうしたことを行わないのでしょうか。
 もしかしたらこうした重大な問題に市職員は気付いているのかもしれませんが、市長の「バンバン保育所造ったろ!」という方針の下、内部からの提言はしづらい雰囲気にあるのかもしれません。今回の一般質問では、「保育の質」を中長期的にも持続可能なものとして維持していくために、将来を見据えた保育所整備計画の必要性を訴えました。


*****

【質問(Q)】藤井哲也 ※太字
【答弁(A)】福祉子ども部長(市長代理)


 本市人口ビジョンにおいても、また2028年度までを期限とする大津市総合計画においても、子ども人口が減少するのは確実であり、政府が打ち出したスウェーデンやスイス並みの女性就業率を実現するとしても、現行計画に沿って保育所を増やし続ければ、将来的に保育施設が過剰となる可能性が高い。現在、公立幼稚園の統廃合に係る方針が示され、また公立小中学校の学校規模適正化に係る議論が進められているが、保育園においてもいずれは同様の課題が生じるものと思われる。
 持続可能な保育サービスを20年後、30年後も提供し続けるためには、将来に対し無計画、無責任であるべきではないことは、行政においてももちろん認識しているはずである。
 以上の事柄を踏まえ数点質問を行う。

(1)本市における保育ニーズの中長期的な将来展望
❶中長期的な保育ニーズの必要量の展望(どこまで女性就業率を高めたいのか)
 本市では中長期的、仮に総合計画の最終年度である2028年度前後、人口ビジョンの中間目標年度である2040年度前後の保育ニーズの必要量をどの程度と推定しているだろうか。
女性の推定人数や合計特殊出生率を人口ビジョンで定めていることから、就学前の幼児を持つ女性の就業率を一定期間でどこまで高めたいのかによって概算することができると思われるが、その見込み量を伺う。


 本市における保育ニーズの中長期的な将来展望についてでありますが、大津市人口ビジョンにおける女性の推定人数及び合計特殊出生率などから算定した0歳から14歳の年少人口は
2030年で4万3088人、2040年で4万4181人となっており、本年度当初の4万8144人から緩やかに減少しております。
 女性の就業率につきましては、大津市女性活躍推進計画において平成32年度における女性有業率の指標として30歳から34歳を75%、35歳から39歳を70%としておりますが、就学前の幼児をもつ女性に限定した就業率の目標は有しておりません。
 詳細な保育ニーズは、女性の就労希望や0歳から5歳児までの未就学児の人口により割り出されるものであり、人口ビジョンの数値からは具体的な保育の見込み量を推定することは出来ませんが、保育の利用を希望される方は、いまだに増加傾向にあることから、現在の利用者数より増えるものと考えております。


(2)持続可能で質の高い保育サービスを提供し続けるために
❶中長期的な保育ニーズの必要量の展望に対する施設及び保育士の縮減に関する見解について
 その上で、本市行政が推定する将来の保育ニーズの見込み量に対する(万一見込み量が出せないのであれば、保育利用者数ピーク以降の)保育施設、保育定員、保育士の縮減に関する考え方を伺う。


 本市行政が推定する将来の保育ニーズの見込み量に対する保育施設、保育定員、保育士の縮減に関してでありますが、
 2040年における保育利用見込み量を現在より増加するものと考えていることから、本年4月現在の定員7591人から実際の保育利用申込の推移を加味しつつ引き続き整備を行い、一定の保育ニーズに対応可能となった時点で、その需用に応じ公立保育園の定員を調整してまいりたいと考えております。


❷持続可能で質の高い保育サービスを続けるための中長期間の基本方針の必要性について
 最後に、持続可能で質の高い保育サービスを提供し続けるための中長期間の基本方針を持つべきと考えるが見解を伺う。


 持続可能で質の高い保育サービスを提供し続けるための中長期の基本方針についてでありますが、本市の総合計画基本構想において基本方針1の基本政策1に「子どもの未来が輝くまちにします」を位置づけ、「安心して子どもを産み育て、子どもが健やかに育つことができるまちの充実」を目指しております。
 なお、量の見込みやその確保方策につきましては、女性の就業率、出生率などに左右されることから、5年程度の比較的短期間の計画期間である子ども・子育て支援事業計画等で検討することが妥当であると考えております。


*****

 私が算出したこども人口の推計値と行政が答弁で用いた推計値にかなり差があるように思いますが、私も行政も「大津市人口ビジョン」に基づき、算出していることが分かりました。

 しかし、私が用いたのは「将来推計人口」で、行政が用いたのが「将来展望人口」です。
 「将来展望人口」については、合計特殊出生率を2030年に1.8まで回復(2015年:1.48、2016年:1.49)させることを前提としたものです。


(私が参考にした「将来推計人口」)




(行政が参考にした「将来展望人口」)





 私も行政もどちらもエビデンスに基づいて将来の子ども人口を推計しているわけで、どちらも誤りではありませんが、言えることは行政は楽観的で、私は悲観的というか現実的だという事です。
 よほどの抜本的な政策が進められるのであれば別ですが、2030年に合計特殊出生率が1.8で、2040年に2.07になるというのは余りにも非現実的に思います。確かに目標として希望者全員が希望する子供を産んで達成することができる「1.8」や、人口置換水準とされる「2.07」を設定する意義はありますが、これを現実の政策に当てはめるのはちょっと無理があります。ちなみに合計特出生率が2.07を日本で切ったのは1974年、1.80を下回ったのは1984年です。
 仮にこれを大津市の政策のベースとするのであれば、幼稚園や公立小中学校、市民センターのあり方検討でも用いるべきです。子どもの数が今より減らないのであれば、小中学校の規模適正化の必要性はないように思います。

 ちなみに、教育委員会が学校規模適正化の検討にあたってベースとしているのは、私が採用している人口推計(中位パターン)です。※下図




 保育園の整備計画に当たっては、超強気の「将来展望人口」を用い、小中学校の整備計画に当たっては現実的な「将来推計人口」を用いる、ダブルスタンダード(二重基準)が発生しています。いったい、どちらが正しいのでしょうか?


大津市議会議員 藤井哲也拝







▲ページのトップへ